今回は日本の人材市場の特長に関する2回目のブログです。
さて、日本も終身雇用から徐々に脱却し、少しづつ「転職」に対するマイナスイメージが薄まっていきました。
振り返ると、その転機となるタイミングがいくつかあったかと思います。
もちろん前から少しづつ地殻変動というか「転職」に対するハードルの低下は起きていたと思いますが、
まずは2002年から始まった新興企業の台頭が一つの大きな要因だったと思います。
優秀な若い人たちが、従来のレガシー企業から、例えばソフトバンク、楽天、今は無き(まだあるか・・・)ライブドアなどに大量に流れていった時代です。
そしてそれらの企業がレガシー企業を猛烈な勢いで隅に追いやり、規模を拡大させていきました。
ただ、これは20代の若い人達の間での動きがメインで、もう少し上の、いわゆるまさに働き盛りの層までは本格的に浸透していなかったのですが・・・そこに起きたのが、
「リーマンショック」
会社のまさに中心で活躍していた人が、ある日突然「リストラ」を宣告されるわけです。
リーマンショックで一気に「転職」の扉を開けたと思います。
リーマンショックで多くの(と言うかほとんどの)企業がリストラを余儀なくされ、結果として多くの人が望む望まないにかかわらず「転職」という経験を余儀なくされたわけです。
終身雇用を信じて疑わなかった会社から三下り半を突き付けられ、大変な思いをして転職をしなければならなかったことで、
「あぁ、会社って最後は助けてくれないんだ」
ということに多くの人たちが気づき、そして周りを見れば多くの人が同じような転職組なので、
「転職=あまり言いたくないことではなくなった」
ということが人々の意識を変えるのに大きく関係したと思います。
周りで経験者が多いと、敷居は下がるものです。
リーマンショックで転職経験者がものすごく(そして一気に)日本で増えたはずです。
私は人材紹介会社の立ち上げ事業で2011年に日本を離れ、2017年に帰国するまで、およそ6年間日本を離れていました。
2017年に帰国して、とても驚いたのは街中や電車の中の至る所にある求人サイトの広告でした。
本当にびっくりするくらいどこにでもあり、また今日では様々な人材系のテレビCMを見ます。
これは私が日本を離れる2011年まではほぼ無い光景でした。
離れていたからこそ感じられることですが、とにかく衝撃的な違いでしたね。
・・・ということで「転職」はついに日本でも市民権を得るわけですが、ではそれと連動して求職者の履歴書の価値は上がったのでしょうか?
私の見解としては「否」です。
海外だと、転職をするために最初に用意するものはCV(履歴書)であり、すべてはそこから始まるのですが、日本の場合はその始まりが「転職サイトへの登録」になります。
これは日本が圧倒的に世界と比較しても求人サイトの数が多い結果にもなっているのですが、どうも求人サイトを介したやりとり(求人の掲載~求職者の獲得)というのが日本人の性に合っているのかもしれません。(笑)
とにかく日本はとても求人サイトが多いです。
もう一つの理由は、日本は「転職」という言葉なのに、実態は「転社」になっている点です。
つまり海外ではほとんどの求人は「この仕事は何で、どういう経験が必要」かという点がはっきりしており、求職者が書くCV(履歴書)も日本の一般的なJIS規格の「履歴書」書式とはまったく違って、
「自分はどこで何をしてきて、どういう専門性があるのか?」
ということだけが書かれています。
結果、求人票と履歴書のマッチングによって、ほぼほぼ精度の高い選考が可能になるわけです。
ところが、日本の場合、あの履歴書の書式は、いわば身上書みたいなもので、本籍がどこで、学歴がどうで、就業履歴がどうか、家族構成や資格を記載して、最寄り駅がどこかであとは趣味とかを書くわけです。
そして判で押したように「希望給与」の欄には
貴社規定に従います
と書くわけです。
(これ以外の文字をあそこの欄で見たことが無いので、それならば最初からそこにそう印刷しておいても良さそうですよね・・・)
もちろん、それでは経験などの情報が全く無いので、同時に「職務経歴書」なるものを出すこともありますが、会社が面接時や採用時に保管するのは履歴書です。 履歴書は保管するが職務経歴書は保管しない、ということがあっても、その逆をしている会社は見たことがありません。
つまり位置づけ的には
履歴書=必須
職務経歴書=あればベター
ということになります。
なので、過去の経験とかまったく度外視するとまでは言わないですが、例えば「ポテンシャル採用」などというわけのわからない理由で、まったくの未経験者が「雰囲気が合いそう」という理由だけで採用されてしまうことが、稀でなく結構起きるてしまうわけです。 これはやはり転職ではなく転社でしょう。
これは履歴書で選考する意味があまりない(そもそもできない)から、ということになります。
結局、採用・不採用を決める要素は、初対面同士のわずか小一時間の面接ということになるのですが、果たしてこんな選考方法で、本当にこの21世紀、乗り切っていけるのでしょうか?
面接を数多くこなす企業の人事の方であれば、ほぼ漏れなく実感できるかと思いますが、日本だと履歴書はせいぜい面接時の手元資料程度(面接官が質問する時の参考程度)で、面接が終わればもう二度と活用されないことがほとんどかと思います。
ではこの面接重視のシステムにはどのような弊害があるのか、それを次回、触れたいと思います。
ではでは、